SS、ある夏の夜の物語
暗く静まりかえった寝室、ふと目が覚めた僕の目には緑色のあわいLEDの光を放つエアコンが映った。
うだるような暑さが続く日中に働いていれば疲れが残らない、という事はないのだが、何故か僕は目が覚めた。
耳元で囁く声が聞こえる。
「ねえ・・・」
まだ若い彼女が僕を誘う、疲れてるんだよ、と僕は手で軽く振り払う。
「私、欲しいの・・・」
拒否された事をものともせず、彼女は僕に触れてくる。
何もこんな夜中に、と思う、しかしそれが生き物の性かもしれない。
耳元でしきりに彼女は甲高い音を立てて僕を誘う、お願いだ、僕を寝かせてくれ。
次の瞬間、僕は備え付けておいた殺虫剤を部屋の物陰という物陰に振り撒いた。
そう、若い蚊の雌はしきりに血を吸いたがるから────
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カテゴリ : 日記