地上最強の嫁~ムスカ~
一体どうなっているんだ・・・
8月と言うのに珍しく冷気すら感じた早朝にも関わらず、あたしは玉の様な汗を額に浮かべながらセルフスタンドで呟いた。
対首○高用の戦闘機として婚約に至ったR1000だけれども、5月での死亡事故を皮切りに首都○の空気は少しずつ淀み始め、今や毎月必ず死亡事故や重症を負う事故が発生するようになり、何か大いなる宇宙の意思的な物が「しばらくあそこに行くのは止めなさい」と言っているような気がしているので、ここ二ヶ月は地元の峠小僧と化しております。
大いなる宇宙の意思的な物を感じているのはあたしだけではないようで、CB※のヒートギズモ君も環○に行くよりは、峠がいいというワケで再びS峰峠にと赴く事になりました。
集合時間は午前6時。
あたしの家からは集合場所まではのんびり行っても10分足らずなので、充分それに間に合うように家を出て、何処かに出かける前には必ずそこで給油をすると決めているセルフスタンドへとやってきた。
そこでいつものようにハイオクを満タンにして、細君の腹を満たそうとするのだけれども、紙幣を投入して給油ノズルを操作してもガソリンが出ない。
何回やっても何回やってもガソリンが出ない。
その有様ははエアーマンが倒せないという状況にあまりにも似つかわしく感じた。
E缶なんて便利な代物があれば何も言う事はないのだが、E缶どころかアイテム2号すら持ち合わせていない為、半ばブチ切れながら給油ノズルを操作しているあたしを見かねたスタンドの店員がやって来た。
「お客様が料金を投入されたのはレギュラーの方でございます」
(゜д゜)
穴があったら入りたい瞬間であった。
そんなこんなで余計な時間を喰ってしまい、間違いなく集合時間の午前6時を回った頃に待ち合わせ場所のH松山インター近くに到着。
待つのは好きだけど、待たされるのは嫌いなあたしはヒートギズモ君の姿を前方に確認すると
無事に合流した二人はいざ秩父に向かって出発するのですが、流石にヒートギズモ君は経験値が高く、まだ三回目という峠までの道のりをメタルスライムのような逃げ足で右に左にクルマをかわして進むモンだからついてくのが大変でした。
そして現地に到着し、まずは下見で軽く流していると、嗚呼何という事でしょうか。
今日に限って一番美味しい場所が工事中で道路に土砂が散乱していて車線が丸々一つ潰れている有様。
こうなると、その区間はもう切り捨てるしかなくて前後区間でのお楽しみと頂上での協議の末合意し、まずは3本走る事に。
峠の途中にある折り返し地点に行くと、ヒートギズモ君が
「オラァ!キサンが前走らんかい!」
と無言の内に語りかけていたので、今日は何処で後ろからギラを浴びせられるのかしら・・・と怯えつつ、スタート。
工事区間前まではパワー差で逃げ切れるけれど、そこから先でちょっと色気を出してお尻を右左に振ろうなんて余計な事をするとアッサリ刺されますね。
とりあえず今回気付いたのはスロットルを開け切れていない事と、コーナー進入に対する姿勢作りが明らかに遅い事。こーいう事を教えてくれるのは良く出来た車体があってこそですな。
また首○高と違ってワインディングでは地味なヤツが結構馬鹿に出来ない速さだったりするもので、ヒートギズモ君をもってしても速いと言わせるC※750とゼ※ァーのお陰で工事区間の前ではそこそこスロットルを開ける事ができ、最高速もぬあやkm/hまで伸びました。
γの頃はそんな三桁の速度なんて有り得ないと思っていたけれど、実はS峰峠は低速~中高速の区間に見事分かれていたんですねぃ。いやはや。
地味な車体が意外と速い一方で派手な車体のSS等は大概がとりあえず山には来ましたという感がやはり見受けられて、そりゃあたしも初めて来た場所では習熟走行に勤めますが、それでもお前折角のSSが泣くぜ!と言いたくなるような(言いましたけど)輩が多いのもまた事実。
特に旧型R1000のK5が登ってきた時は”オラなんだかワクワクしてきたぞ!”とGSX-R同士のバトルに期待したものですが、待っても待っても走り出す気配がありゃしねぇ('A`)
ま、課題も見つけたし日も高くなって暑くなってきたので帰りますか、という事で下山を始めたのが10時過ぎ。
いくら山と言っても秩父界隈じゃあ暑さはしのげない物で、ヘルメットのシールドを上げて顔を冷却しながら一路家路へ向かっていた時に”ヤツ”はやって来た。
ビシィ!
嫌な音を立てて、眼球に突っ込んできたのは虫。
甲虫の類ではなく羽虫のようだが、それでも涙腺の辺りでもぞもぞ動き回り痛いのなんの。
目がァァァァァ!目ぇぇぇがァァァァァ!!
と一人悶え苦しむあたしに気付かず、ヒートギズモ君はメタルスライム並の逃げ足で走り去っていきましたとさ・・・
カテゴリ : 地上最強のヨメ GSX-R1000