格差社会の齎す負の遺産により住処を奪われている人・・・所謂ホームレスはゴマンといる。
今では中高年だけに留まらず、20代の若者も住居を持たずに漫画喫茶や24時間営業のファストフード店で世を明かし、日雇いのバイトで食いつないでいると言う。
彼等だってしたくてそんな生活をしているワケではない。
そう、
昨日のあたしだって寝たくて国道4号線の脇で寝ていたワケじゃあない。
仕方なかったんです・・・
その状況は最終兵器彼女に出てくる防衛省のおっさんの口から出てくる唯一の言葉が相応しい。
JAFを呼び16,000円を徴収され、更にその場のノリで会員になり計18,020円を支払ったあたしは歩道に足を壊して動けなくなった細君と一緒に立ち尽くしていた。
さて、これからどうするか?GSでは冷たく修理を断られたが、ココは上野のバイク街。
今では寂れてしまったが20年前はツナギを着た
熱きライダー達で溢れかえっていた場所だから、パンクの応急修理をしてくれる店くらいすぐ見つかるだろう・・・と、時計代わりの携帯で時間を確認すると午前6時。
日本では大概の商店が開くのは午前10時だからそれまで4時間もある事になる。
もしも手ぶらであるのなら漫画喫茶で若年ホームレスに混じり仮眠を取る事も出来たであろうが、今日は細君と一緒。
目を離したら、アジア系の人が4人くらい何処からともなく現れて、下種な笑いを浮かべながら無抵抗な細君をレイプした挙句に海外に売り飛ばすに決まってます!
それだけは避けたいから、細君の傍を離れるわけにはいかない・・・と、なれば残された手段はただ一つ!
上着を脱いで、足と後輪を結び、脊髄パッドを地面に敷いてゴロン。
おやすみなさ~い。
仕方なかったんです・・・
だって金曜日に30分仮眠を取ったきりでずっと朝まで起きっ放しなんですよ?
何?問題はそこじゃない?東京のド真ん中でよくも眠れるって?
おまん等何もわかってないぜよ。
これでも18から21までの3年間は毎年盆の季節には雨が降ろうがどうしようが二日くらいは野宿を経験してましたから、新聞紙やビニールシートの保温性とか熟知してるんですよ、ええ。
だから今更路上で寝ている姿を人に見られても、ね?
それに昨日は早朝は意外に涼しかったのでそこそこ快適でしたよ。
そんなこんなでウトウトしながら2時間半程仮眠を取り、時計の指す時間が9時に近付く頃には数件のバイク屋が開店の準備をし始めました。
ああ、コレでやっと帰る事が出来る・・・都内を抜けたらさっさと行き着けの店に行って、メッツラーのレンスポルトを履き替えて、それとそれと・・・
と、妄想しながら待つことしばし。
10時が近付いた頃に意を決して、まずは一番近くの大型バイク店の戸を開く。
”すみませ~ん、ちょっとお尋ねしたいんですが~”
「はい、いらっしゃいませ」
”こちらではパンクの応急処置等は行ってますか?”
「あ、ウチではやってません」
( ゚д゚ )
まぁ、中にはこういう店もあるよな・・・
気を取り直して次の開いている店に、パンクをしているお陰で滅茶苦茶重たい細君(推定重量200kg)を押しながら100m程歩く。
既に高く上った太陽の日差しのせいか、気温はぐんぐん上がっており、次の店に着く頃には呼吸は乱れ汗は滝のように流れていた。
”す、すみません・・・こちらの・・・ハァハァ店舗ではパンクの応急修理とか・・・ハァ、してませんか?”
極力紳士的な態度を装おうにも体力の急激な消耗から余裕を無くしたあたしの顔は間違いなく殺し屋のような顔だったに違いない。
「ウチはやってません」
( ゚д゚ )
おいおい待ってくれよ、ココはバイク屋だろう?
もしもココがメットとかグローブを扱う用品屋なら話はわかる・・・スゲーよくわかる・・・・・・
だが車体の整備を行うバイク屋が初級中の初級のパンクの応急処置をやってねーとはどういう事だ~~~~?
そんなの納得いくか~~~~おい?
俺はぜ~んぜん納得いかねぇ・・・・・・ナメてんのかァァァ―――ッこの俺をッ!
コケにしやがってッ!ボケがッ!
成る程・・・自分の所の車体以外は扱わないというワケか。
資本主義の現実に怒りと絶望を感じたあたしは地獄の魔王に後であいつらをSATSUGAIしてくれるようこっそりお願いをしておきました。
そんなこんなで3軒目を目指して、人の心の乾ききった東京砂漠を動けない細君と共に一歩一歩進みます、貴女といれば、嗚呼、貴女といれば辛くはないわ。
そして3軒目。
”すみません(以下略)”
「ウチでは(ry
( ゚д゚ )
「あ、でも」
( ゚д゚ )?
「隣のお店ならやってくれるんですけど、11時開店なんですよ」
( ゚д゚ )!!
ここでも答えはノーでしたが、一縷の望みを得る事が出来た。
この時の時間は午前10時15分、もう午前3時からこんな状態のあたしにとって45分なぞ取るに足らない時間ですから4件目が開くまで待ちましたよ。
こんな事ならばパンク修理キットくらい持ち歩くべきだったな・・・
たかだか2,000円程度の出費をケチっただけで、20,000円の出費ですからね。
なんとか4件目で応急処置をしてもらい、後は行き着けのお店に行くだけとなり、都内を254を使い北上。
しかし混んでるんですよ、コレが。
全く土曜日だと言うのに一体何が目的でサイタマーに行くと言うのでしょうか?
もしもココにラピュタから天の雷が落ちてきたら
「ハハハハハハ!見ろぉ人がゴミのようだぁ!!」
とムスカ大佐の気分が味わえたでしょう。
あたしもゴミのように飛び散るでしょうけど。
なもんで関越道を使い、小江戸で降りて再び下道を使うのですが、またまた混んでるんですよねコレが。
全く土曜日だと言うのに一体何が目的で秩父の方向に向かうクルマが多いのでしょうか?
邪道であるすり抜けを駆使しようにも、使えるほどの隙間が無かったりで、熱い~~!!あーもうクルマはどうしてこんなにレスポンスが鈍いんだよ!!とメットの中で叫びながら、なんとか目的地まで到着した頃には13時近かった。
事前にヒートギズモ君から「今日は2時にならないと誰もいませんよ」と言われていたけれど、一時間くらい待つのはもう些細な事となっていたので、装備を一気にキャストオフして待つこと1時間。
店長いまだに帰還せず。
まぁ2時にならないと~と言ってもピッタリに帰ってくる事もないよね、と更に30分。
店長いまだに帰還せず。
まぁ下道も高速も混んでたしね、クルマじゃすり抜けも出来ないし、と更に30分。
店長いまだに帰還せず。
('A`)
結局店長が帰って来たのは15時半。
ああ、コレでやっと帰る事が出来る・・・9分山のタイヤにハイスロットルキットを組み込み家に向かったのが16時、そして家に着いたのが17時。
本当ならば12時間前には帰宅している筈だったのに、パンク修理キットを持っていかなかった為に……
そして19時間振りに食べ物にありついたあたしはこう言ったのだった。
久しぶりのシャバなメシだぜ!